SCM415の特徴と加工におけるポイント

SCM415の特徴や用途、性質、メリットデメリットについて解説しております。

SCM415は、クロムモリブデン鋼の中でも低炭素クロムモリブデン鋼の一種です。
SCMはSteel Chrome Molybdenumを示し、415はクロムとモリブデンの含有率を示しており、クロムモリブデン鋼の中でも最も炭素量の少ない材質です。

SCM415は低炭素クロムモリブデン鋼であり、強度と耐疲労性のバランスが良く、機械的性質が安定しています。

熱処理によって硬化することができ、硬度を調整できます。機械加工性が良いため、多くの用途に適しています。

SCM415は多岐にわたる産業での使用が確認されています。
具体的な用途としては以下のようなものが挙げられます。

• 一般機械部品: ボルトやナット、ピン、リンクなどの接続部品。
• 軸受け: 高負荷や高速回転を伴う機器や装置の主要な支点として使用。
• 歯車: 各種機械や装置の駆動伝達部において、高強度や精密な動作が求められる場面で使用。
• シャフト: モーターやエンジンの動力を伝達する主要部品。
• 工具: 手動や機械動作のカッターやドリル、刃物など。
• 自動車部品: エンジン部品、トランスミッション部品、シャシー関連部品など。
• 建設機械部品: クレーンのブーム、掘削機のアームやバケットなど、高い強度や耐久性が求められる部品。
• 農業機械部品: トラクターや収穫機、播種機などの動力伝達部や作業部。

SCM415は強度と硬度のバランスが取れており、熱処理によって硬度を向上させることができます。
耐摩耗性や靭性（ひずみに対する耐性）も優れています。

SCM415のメリットには、機械加工性が高く、多くの用途に適していることが挙げられます。
熱処理によって硬度を調整でき、耐摩耗性を向上させることができます 。

溶接性がやや低く、特に高強度を必要とする場合は適切な溶接方法を選択する必要があります。
酸化しやすいため、保管時には適切な環境管理が必要です。

• 焼き入れ

  SCM415は焼入れによって高い硬度や強度を持つことができます。 通常、オーステナイト状態に加熱した後、急冷してマルテンサイトを形成させます。 焼入れ温度は材料や目的によって異なることがありますが、850°C - 880°C が一般的です。

• 焼き戻し

  焼入れの後、硬さを少し下げて靭性を向上させるために行われます。 500°C - 650°C の範囲で加熱し、その後空冷または油冷します

• 焼きなまし

  SCM415の硬さを下げ、加工性を向上させるために行われる熱処理です。 650°C - 700°C で加熱し、その後空冷します。

• 浸炭焼き入れ

  表面の硬度を上げるために、炭素を材料の表面に拡散させる熱処理です。 870°C - 950°C で加熱し、その後急冷して硬化させます。

• 高周波焼き入れ

  部品の表面だけを短時間で高温にし、焼き入れを行うことで表面を硬化させる方法です。高周波の電流を部品に通すことで、部品の表面を急速に加熱します。加熱後、急冷して焼き入れを行います。SCM415の高周波焼き入れは、シャフトやロッド、工具などの部品でよく使用されます。これらの部品は、表面の耐摩耗性や耐疲労性を向上させる必要があります

SCM415の一般的な表面処理をご紹介します。
※一部弊社で対応していない表面処理を含みます。

1. メッキ

   • 亜鉛メッキ: 耐腐食性を向上させるために行われ、外部環境や湿度の高い場所で使用されるボルト、ナット、ワッシャーなどの部品に適用されます。
   • ニッケルメッキ: 耐摩耗性や耐腐食性を向上させるため、また美観を向上させるために行われる。装飾的な部品や高級機器の部品に使用されることが多い。

2. ブラックオキサイド（黒染め）

   • 軽い防錆効果と美観の向上を目的として、工具、武器、機械部品などに適用されます。

3. 研磨・バフ研磨

   • 表面の仕上げや美観を向上させるために行われ、装飾的な部品や表示面がある部品に使用されることが多い。

4. 塗装

   • 耐腐食性、耐摩耗性、美観の向上、または特定の用途に合わせた機能性を持たせるために行われる。機械のカバーや保護部品、外見が重要な部品に適用されます。

5. PVD (Physical Vapor Deposition) や CVD (Chemical Vapor Deposition)

   • 薄い膜を部品の表面に形成することで、耐摩耗性や耐腐食性を向上させるために行われる。高性能の工具や刃物、エンジン部品など、高い性能が求められる部品に適用されます。