インコネルの特徴と加工におけるポイント

インコネルの特徴や用途、性質、加工のポイントについて解説しております。

インコネル（Inconel）は、ニッケルを基にした合金で、高温環境での優れた耐酸化性と耐腐食性を特徴としています。主に、ニッケル、クロム、および鉄を含む合金で、非常に高い強度を持ちながら、極端な温度に耐えることができます。

• 高温強度: インコネルは、摂氏700度以上の高温でも優れた強度を維持します
• 耐酸化性と耐腐食性: 酸化や腐食に対する耐性が高く、特に酸性および塩基性環境でも効果的です
• 耐クリープ性: 長時間の高温下でも形状を保持し、クリープ（長期間の応力により材料が変形する現象）に強いです

• 航空宇宙産業:ジェットエンジンの部品やロケットのコンポーネントに使用
• 化学産業:高温高圧の化学反応器や熱交換器
• 発電所:ガスタービンやボイラー
• 海洋産業:海水にさらされる配管やポンプ

インコネル600

• 成分: ニッケル72%、クロム14-17%、鉄6-10%
• 特徴: 高温での耐酸化性と耐腐食性が非常に優れています。特に酸化性と還元性の両方の環境に耐えられます
• 用途: 化学工業の機器、原子炉、食品加工設備、航空宇宙分野のエンジン部品など

インコネル625

• 成分: ニッケル58%以上、クロム20-23%、モリブデン8-10%、ニオブ3.15-4.15%
• 特徴: 優れた機械的強度と耐酸化性、耐腐食性を持ち、特に高温下での耐クリープ性が優れています
• 用途: 航空宇宙産業のエンジン部品、化学工業の熱交換器、海洋構造物、原子力発電所の部品など

インコネル718

• 成分: ニッケル50-55%、クロム17-21%、鉄残部、モリブデン2.8-3.3%、ニオブ4.75-5.5%
• 特徴: 時効硬化型合金であり、高い引張強度と耐疲労性、耐クリープ破断性があります。また、加工性も比較的良好です
• 用途: 航空宇宙産業のガスタービンエンジン、ロケットモーターケース、石油・ガス産業の掘削装置など

インコネル800

• 成分: ニッケル30-35%、クロム19-23%、鉄残部
• 特徴: 高温での耐酸化性と耐腐食性があり、特に硫化環境下での性能が優れています
• 用途: 化学プロセス装置、石油精製、加熱炉、熱交換器など

• 高コスト:原材料費および加工費が高い。
• 加工の難しさ:高い硬度と強度のため、加工が難しく、特殊な技術と工具が必要。

1. 適切な切削速度：低速での切削が推奨されます。インコネルは熱伝導率が低いため、切削中に発生する熱が工具と被加工物の間に集中しやすくなります。高速度での切削は過剰な熱を発生させ、工具の摩耗を加速させるため、工具寿命が短くなります。また、インコネルの高硬度と耐熱性は、切削工具に大きな負荷をかけます。高速切削は工具の摩耗速度を増大させ、工具の交換頻度を高めることになります。低速での切削は摩耗を抑え、工具寿命を延ばすのに役立ちます。また、インコネルのような難削材は、切屑が粘り強くなりやすく、高速切削では切屑が長くなり、切屑処理が難しくなることがあります。低速切削は短い切屑を生成しやすく、切屑処理が比較的容易になります。

2. 高品質の工具：超硬合金やサーメットなどの工具の使用が望ましく、コーティングされたものが工具寿命を延ばすのに適しています。

3. 冷却剤の使用：切削中の高温を防ぐため、十分な冷却が必要です。

4. 小さい切り込み：切り込み量を少なくし、工具への負担を軽減する必要があります。

5. 適切な送り速度：適切な送り速度を維持し、切削の安定性を保つ必要があります。