HPM38の特徴と加工におけるポイント

HPM38の特徴や用途、性質、メリットデメリットについて解説しております。

HPM38はSUS420J2を改良した13Cr系含Moステンレス鋼であり、特殊溶解によって製造されているため、高硬度で耐食性と、鏡面仕上性の要求されるプラスチック金型に最適です。また、熱処理変形が極めて小さいので、精密熱処理に適しています。さらに、耐錆性に優れており、金型の保管にも効果的です。耐食性と硬度のバランスが特徴で、多くの産業で利用されています。

HPM38は高硬度のステンレス鋼であり、耐食性と加工性のバランスが良いです。 熱処理によって硬化することができ、硬度を調整できます。 当社では、焼入れや焼き戻しによって硬度を調整します。 機械加工性も良好で、多くの用途に適しています。

プリハードン状態での使用も可能です。

HPM38は特に金型産業での使用が確認されています。 具体的な用途としては以下のようなものが挙げられます。

• プラスチック成形金型: 高硬度が求められる部分や、複雑な形状の金型に。 ・精密部品: 耐食性と硬度が必要な部分。
• 工具: 高硬度が求められるカッターやドリル、刃物など。
• その他の機械部品: 耐食性と硬度のバランスが求められる部品。

HPM38は高硬度と良好な耐食性を持っており、熱処理によってさらにその性質を向上させることができます。

HPM38のメリットには、高硬度と良好な耐食性を持ちながらも、加工性が良い点が挙げられます。

高硬度のため、加工時には適切な工具や条件を選択する必要があります。

1. 焼入れ

   • 加熱温度: 1020°C - 1050°C
   • 保持時間: 材料の厚みや大きさに応じて調整しますが、一般的には1時間程度。
   • 冷却方法: 油冷または空冷。材料の大きさや形状、そして所望の硬度や用途に応じて選択します。

2. 焼き戻し (必要に応じて)

   • 加熱温度: 500°C - 550°C
   • 保持時間: 1-2時間
   • 冷却方法: 空冷

3. 得られる硬度

   • 焼入れ後: 約58-60 HRC
   • 焼き戻し後: 硬度は焼入れ後よりも少し低下しますが、靭性が向上します。具体的な硬度は焼き戻しの条件によって異なりますが、一般的には54-58 HRCの範囲になります。

HPM38の熱処理は、材料の特性を最大限に引き出すための重要な工程です。焼入れによって高い硬度を持つ材料を得ることができ、焼き戻しによって靭性を向上させることができます。熱処理の条件は、製品の用途や要求される性質に応じて調整することが可能です。

HPM38の一般的な表面処理をご紹介します。
※一部弊社で対応していない表面処理を含みます。

1. 電解研磨 (Electropolishing)

   • 用途: 表面の微細な凹凸を取り除き、滑らかで光沢のある表面を得るため。また、表面の不純物や酸化物を除去して、耐腐食性を向上させる。
   • 適用例: 精密部品や医療機器、食品加工機器などの部品。

2. 硬質クロムメッキ (Hard Chrome Plating)

   • 用途: 表面の硬度を向上させ、摩耗抵抗や耐腐食性を高める。
   • 適用例: 摩耗にさらされる金型や機械部品。

3. PVD (Physical Vapor Deposition)

   • 用途: 表面の硬度や耐摩耗性を向上させるため。また、特定の色を付けることも可能。
   • 適用例: 刃物や金型、装飾部品。

4. CVD (Chemical Vapor Deposition)

   • 用途: 表面の硬度や耐摩耗性を向上させる。特に高温での使用に適している。
   • 適用例: 高温で使用される金型や工具。

5. ブラックオキサイド (Black Oxide)

   • 用途: 軽い防錆効果と美観の向上を目的として行われる。
   • 適用例: 工具や機械部品。

6. 研磨・バフ研磨

   • 用途: 表面の仕上げや美観を向上させるため。
   • 適用例: 装飾部品や表示面がある部品。