中ぐり加工とは?役割・工程、中ぐり盤の種類など詳しくご説明

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中ぐり加工とは、既に開けた穴の寸法精度をさらに高めるために、穴を広げながら内面を仕上げる加工方法です。近年では、中ぐり加工の高精度化・自動化が国内製造業でも注目を集めています。
この記事では、中ぐり加工の基礎知識と工程、主要な中ぐり盤の種類をご紹介していきます。

中ぐり加工の基本を知る

中ぐり加工は、金属加工において既に開けられた穴をさらに広げ、内面を高い精度で仕上げる工程を指します。穴を新たに開けるドリル加工と異なり、下穴を基準にして寸法精度を補正し、形状や真円度、同軸度を向上させるのが特長です。とりわけ機械部品のように軸受け部分やシャフトを正確に組み込む必要がある箇所では、この加工が重要です。日本の製造業では高精度が求められる自動車や航空機の部品、エネルギー設備の構造材など、多くの分野で用いられています。
また、中ぐり加工は、穴の直径を大きくするだけではなく、内面の粗さを一定以上のレベルに保つために切削工具や回転数、送り速度などの条件設定が重要となります。この加工によって、部品の組み立て精度や製品の性能に大きく影響が及ぶため、熟練した技術者の技量が問われる工程でもあります。

旋削加工との違い

中ぐり加工と旋削加工は、どちらも金属を削るという意味では同じですが、対象や目的が異なります。旋削加工は主に外周を削るのに対し、中ぐり加工は内径を高精度に仕上げることを目的としています。たとえば、外形の寸法を調整したり、円筒部の表面を滑らかにする場合は旋削加工が行われます。一方で、内部の穴をさらに拡げ、内面を滑らかにし、真円度を高めたいときには中ぐり加工が選ばれます。
これにより、旋削盤と中ぐり盤では使用する工具やチャックの方法、保持具の種類が異なります。旋削盤ではワークを外側から固定する一方、中ぐり盤では内面を仕上げるためにボーリングバーという専用工具を使用し、芯出し精度を高める工夫が求められます。営業部の方にとっても、これらの違いを把握しておくことで、顧客からの技術的な相談や最適な加工提案をスムーズに行いやすくなるでしょう。

中ぐり加工で使用される機械の種類

横中ぐり盤の特徴

横中ぐり盤は、中ぐり加工を代表する工作機械の一つで、特に大型のワークに対して高い精度を発揮します。主軸が水平に配置されており、ワークをテーブル上に固定して加工するため、重たい部品でも安定して加工が可能です。
この機械では、主軸が前後にスライドしながらボーリングバーを穴の中に挿入して加工を進めます。大きなフレーム部材や建機、発電設備に用いられる部品などの加工においても、高い真直度と真円度が確保できるのが特長です。
また、最近の横中ぐり盤はNC(数値制御)化が進み、複雑な形状の穴加工にも対応できるようになっています。複数の穴を一度に加工できるマルチタスク化や、工具交換の自動化により、段取り替えの時間が削減され、生産効率も向上する傾向にあります。

立中ぐり盤の特徴

立中ぐり盤は、主軸が垂直に配置されており、比較的小型の部品の内面加工に向いています。主に中径から小径の穴を高精度に仕上げたいときに用いられることが多く、テーブル上にワークを水平に固定できるため、重力の影響で加工中にワークがずれにくいというメリットがあります。
立中ぐり盤の中には、マシニングセンタに近い構造を持つタイプも存在し、穴加工だけでなく面削りや溝加工など複合的な加工が可能です。これにより、加工工程の集約が進み、コストダウンと品質の安定化が期待できます。

ジグ中ぐり盤の特徴

ジグ中ぐり盤は、特に位置精度が重要な穴加工に用いられる専用機です。治具(ジグ)と呼ばれる補助装置を活用して、穴の位置ずれを防ぎつつ加工を行うことができるため、組立部品の高精度な穴あけや位置合わせに適しています。
自動車のエンジン部品や金型製造においては、穴のずれが製品不良に直結するため、ジグ中ぐり盤のような専用機の存在は不可欠です。高精度なスピンドルと微調整が可能な送り機構が備わっていることが多く、手作業での微調整と自動化の両立が進んでいます。

NC中ぐり盤の活用方法

NC中ぐり盤は、数値制御を活用して複雑な穴加工を高効率かつ高精度で行える機械です。特に、多品種少量生産が増加傾向にある現在の製造現場では、段取り時間を短縮し、オペレーターの技能差を補うためにNC化の恩恵が大きいです。
最新のNC中ぐり盤では、複雑な座標計算を自動で行うだけでなく、工具摩耗の自動補正機能や加工状況をモニタリングするセンサーが搭載されている機種も登場しています。その結果、安定した品質の維持と加工コストの削減が両立できるようになっています。

中ぐり加工の作業工程とポイント

下穴あけから仕上げまでの流れ

中ぐり加工を行う際は、まず下穴を開ける工程が不可欠です。下穴はドリルなどで開けられますが、この段階で穴の位置精度と大まかな寸法が正しく確保されていないと、後の中ぐり加工で修正が難しくなるため注意が必要です。
下穴が開いた後、ボーリングバーを使用して穴を広げながら内面を削り、寸法精度を整えます。この際には工具の芯合わせが最も重要で、芯がずれると穴の真円度が低下します。段取りの段階で治具や固定具を用い、正確に芯出しをすることが品質確保の鍵となります。
最終仕上げでは、仕上げ刃物を用いて内面の粗さを整え、顧客の求める仕様に合わせた寸法に到達させます。切削油の選定や切削条件の微調整により、刃物の摩耗を抑えながら滑らかな面を得ることが可能です。

切削条件設定の重要性

中ぐり加工では、回転数、送り速度、切り込み量といった切削条件の最適化が仕上がりを大きく左右します。特に内径の仕上げは、外形よりもビビり(振動)が発生しやすく、加工面にムラが出る恐れがあります。そのため、刃物の突出し長さを最小限に抑え、切削速度を過度に上げすぎないことが重要です。
最近では、加工シミュレーションソフトを活用して最適条件を事前に検証する企業が増加傾向にあります。これにより、加工トラブルを未然に防ぎ、段取り替えの時間短縮や工具寿命の延長が図れます。

効率的な段取りの工夫

中ぐり加工は段取り替えに時間を要する工程の一つです。作業者の技量によって時間差が出やすいため、段取りをいかに効率化するかは製造現場の大きな課題です。具体的には、治具を標準化して位置決めを容易にしたり、NC中ぐり盤の自動工具交換機能を活用したりする方法が効果的です。
また、最近ではIoTを活用して工具の摩耗状況をリアルタイムで監視し、最適なタイミングで交換する仕組みを導入する企業も増加しています。このような取り組みにより、無駄な稼働停止時間を減らし、生産性の向上が期待できます。

中ぐり加工における注意点と課題

加工面の目視の難しさ

中ぐり加工では、穴の内部を加工するため、切削面の状態を外から目視で確認しにくいという課題があります。このため、加工不良が後工程で発覚するケースも少なくありません。
寸法測定器を併用したインプロセス測定や、加工後の内面検査を徹底することが必要です。最近では、非接触で内径の形状を測定できる3Dスキャナーの活用が進んでおり、これにより測定時間の短縮と測定精度の向上が期待されています。

切屑処理と排出の問題

中ぐり加工では、内径から切屑を排出する必要がありますが、穴の奥深くで切屑が詰まると、加工精度の低下や工具破損の原因となります。特に深穴加工の場合、切屑排出が大きな課題です。
切削油の適切な供給や、工具内部にクーラントを通す内部給油方式の採用など、切屑排出をスムーズにする工夫が必要です。切屑が溜まったまま加工を進めるとビビりの発生率も高まるため、切屑の連続的な排出管理は欠かせません。

ビビり対策のポイント

中ぐり加工では、工具が穴の内部で長く突き出されるため、ビビりが発生しやすくなります。ビビりを抑えるためには、刃物の形状を工夫したり、制振性に優れたボーリングバーを選ぶことがポイントです。
また、切削条件を適切に設定し、工具が過度に共振しないようにすることも重要です。高精度な中ぐり加工を継続的に行うには、加工条件の見直しを定期的に行い、最適化を図る仕組みを現場で確立する必要があります。

中ぐり加工の品質を高める取り組み

工具選びと管理

中ぐり加工の品質を安定させるには、何よりも工具管理が大切です。ボーリングバーやインサートの状態をこまめに点検し、摩耗が進んだ工具を無理に使用し続けないことが、加工面の品質維持につながります。
工具管理をデータで一元管理するシステムを導入し、工具の寿命や交換タイミングを自動で把握できるようにする企業が増加しています。これにより、予防保全を徹底し、突発的な加工不良のリスクを減らすことが可能です。

中ぐり加工ならCHAMPIONにお任せください

CHAMPIONでは、多様な中ぐり加工のご依頼に対して、豊富な実績と最新の機械設備を活かした一貫対応を行っています。単品加工から量産品まで、精度が求められる穴加工も安心してお任せください。
自社内で材料調達から仕上げ検査まで一貫して管理しており、お客様のご要望に合わせて短納期にも柔軟に対応します。社内の熟練技術者と最新のNC設備を組み合わせることで、複雑形状や高精度が求められる案件でも安定した品質を提供しています。
また、あらゆる業界のニーズに応えられるように、多品種少量から量産、追加工まで幅広く対応しております。お困りごとや図面段階でのご相談でも大歓迎です。中ぐり加工に関するご相談は、ぜひCHAMPIONまでお気軽にお問い合わせください。




まとめ

中ぐり加工は、既存の穴を高精度に仕上げ、製品全体の品質と組立精度を左右する重要な工程です。横中ぐり盤や立中ぐり盤、ジグ中ぐり盤、NC中ぐり盤など、目的に合わせた設備と技術を活用することで、効率的で安定した加工が可能になります。一方で、ビビりや切屑排出などの課題には適切な設備選びと条件設定が不可欠です。
生産現場では、段取りの標準化や最新の工具管理技術の導入など、営業部の方が顧客提案の際に役立つ視点も多く含まれています。これからの製造業では、デジタル化やIoTを活用しながら、中ぐり加工の高精度化と効率化を進める取り組みが一層求められていくでしょう。

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