リーマ加工の基礎|工具の選び方と加工精度のポイント
リーマ加工とは、穴の内径を高精度に仕上げるための加工方法です。現在、日本国内では...
CC:奥田快
竪型旋盤とは、工作物を下向きに固定し、主軸を縦方向に配置して回転させながら加工を行う工作機械の一種です。
この記事では、従来の横型旋盤との違いからその仕組み、導入メリット・デメリット、そして具体的な活用事例まで解説しています。
竪型旋盤は、その名の通り、主軸が垂直方向に配置された工作機械です。一般的な旋盤がワーク(加工対象物)を水平に固定して加工するのに対し、竪型旋盤ではワークを上からセットし、回転させながら切削します。
この垂直な主軸配置が最大の特長で、大径かつ重量のあるワークでも安定して固定できるため、高い精度での加工が可能になります。主に重工業、鉄鋼、建設機械など、大型部品の加工が不可欠な産業で活躍しています。
これまでの旋盤といえば、主軸が横向きの横型旋盤が一般的でした。しかし横型旋盤は比較的小さな円筒部品の加工に適していますが、大径や重量のあるワークの場合、安定した固定が難しく、加工精度を保つのが課題となっています。
この「大型・重量ワークの加工」という隙間を埋める形で、竪型旋盤の需要が高まり、現在では多くの現場でその採用が進んでいます。大型部品加工の現場において、竪型旋盤は従来の旋盤では難しかった加工を可能にする存在として、その価値を確立しています。
竪型旋盤では主軸が垂直方向、中に回転テーブルを備えています。ワークはテーブル上で水平に固定され、上部から工具を当てて削る方式です。この構造は大型部品であっても重力で固定されるため、振れやたわみの発生を抑えられます。
作業テーブルにはT溝やクランプが整備され、複数箇所でのワーク固定ができます。重さに耐えられる構造により、大径や厚みのある部品でも十分に安定した加工が可能です。また、段取りも簡易でエラーを抑えやすい点も利点です。
重力がワーク本体をテーブルに押し付けるため、チャックによる締め付け力だけで不安定になることが少なく、高精度加工が実現できます。
横型旋盤はベッドに沿って棒材を縦に加工しますが、竪型旋盤はテーブル上でワークを回す構造です。そのため、縦型は天井高・床強度などインフラ条件が厳しい反面、床スペースは比較的コンパクトとなっています。
長尺な部品や小径品には横型旋盤が適しています。一方、短胴で大径の重厚部品には、竪型旋盤が最適です。たとえば発電プラントの軸や重機の円盤部品などが該当します。
竪型旋盤では、おのずと作業者が上方から俯瞰するため、ワークを観察しながら加工できます。これにより作業の把握性が高まり、異常に気づきやすくなる点がメリットです。
竪型旋盤の最大の利点は、重力を利用してワークをテーブルに自然に固定できる点です。数百キログラムから数トン規模の部品でも、ワークがずれにくく、チャッキングミスによる加工不良を防げます。これは、特に厚みや直径がある部品、例えばタービンディスクや大型ベアリング外輪などの加工において極めて有効です。
加工中に発生する切り屑は、重力に従って自然にテーブル外へ落下します。このため、切り屑の再切削による表面粗さの悪化が起こりにくく、加工面の品質を一定に保つことができます。
また、切り屑の滞留がないことで、冷却液の循環効率も維持されやすく、工具の冷却性能も確保しやすいため、加工精度や工具寿命の向上にもつながります。
一方で、竪型旋盤の導入には高額な設備投資が伴います。特に、機体そのものが大型かつ重量があるため、設置には強固な基礎床が必要となります。また、テーブルやコラムの移動幅も大きくなるため、天井高や搬入経路の制約にも注意が必要です。
導入を検討する際は、製品サイズや生産ロットに見合った性能・仕様かを見極めた上で、床耐荷重・電源設備・排水対策なども含めた総合的なインフラ整備が欠かせません。
竪型旋盤は、主に直径方向にボリュームがある部品の加工に向いています。代表的な対象としては、以下のような例が挙げられます。
・発電設備用タービンディスク
・鉄道や建設機械の車輪・ブレーキディスク
・船舶用軸受外輪やフランジ
・鉄鋼製品の大型鍛造品・丸板
これらの部品は、重量や直径の大きさから、横型旋盤では固定が困難だったり、加工中にたわみが生じるリスクが高くなります。竪型旋盤を使用することで、ワークの中心軸を確実に保持したまま精密に加工できるため、結果として形状精度・同軸度・表面精度が安定します。
竪型旋盤は本体重量だけで数トンを超えることも珍しくありません。したがって、導入を検討する際には、設置場所の床耐荷重と水平精度をあらかじめ確認しておく必要があります。
特に古い工場では床補強やレイアウト変更が必要になることもあるため、導入コストには設備本体だけでなく、周辺インフラ整備費も含めて計算しておくのがおすすめです。
全ての製品に竪型旋盤が適しているわけではありません。例えば細長いシャフト類などは横型旋盤の方が適している場合もあります。そのため、対象製品の材質や寸法、公差要求を踏まえたうえで、機種選定を行うことが求められます。
また、切削対象が複数ある場合は、複合旋盤との棲み分けや工程分担も考慮しながら、ライン全体での最適配置を検討する必要があります。
竪型旋盤は機械構造が複雑で、日常点検や定期メンテナンスが欠かせません。そのため導入時には、メーカー側の保守サポート体制や交換部品の供給状況も確認しておくことが重要です。
また、操作性に関しても特殊な構造を持つため、現場オペレーターへの教育体制の構築も同時に進める必要があります。特に新人教育やトラブル時の判断基準について、マニュアル整備などの準備が推奨されます。
竪型旋盤による大型部品加工を検討されている企業様には、CHAMPIONの加工サービスをご提案いたします。
当社は、鉄鋼・建機・エネルギー分野などで使用される大型部品に対する豊富な加工実績を有しており、直径1,000mmを超える円盤形状部品や、厚みのあるフランジ、精度の高い軸受構造品まで、様々なワークに対応可能です。
特にCHAMPIONでは、専用の高剛性竪型旋盤設備を保有し、長時間の連続加工や量産品の安定供給にも応えられる体制を整えています。また、社内での工程設計から検査まで一貫対応が可能なため、外注リードタイムや品質ばらつきにお悩みの企業様にも安心してご利用いただけます。
技術提案・図面検討・素材選定など、営業段階でのご相談にも専門スタッフが対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
竪型旋盤は垂直構造により、大型で重量のある部品の加工において、重力を味方につけた安定性と高精度を実現できる優れた工作機械です。「既存設備では大型部品の精度が出しにくい」「複雑な形状の大型部品を高精度に加工したい」といった課題をお持ちであれば、竪型旋盤の導入や活用を検討する価値は十分にあります。
私たちは、長年の切削加工のノウハウを活かし、お客様の具体的なニーズに合わせた精密部品の特注製作サービスを提供しています。大型部品の加工でお悩みであれば、ぜひ一度CHAMPIONにご相談ください。